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VSTプラグインとDTMの未来予想

はじめに

この記事は拙著『VST Lovers ~このVST(i)プラグインが熱い!~』の文章を再構成したものです。
(P156 ミニコラム「VSTプラグインの未来予想・妄想」)

そもそもVSTプラグインとは何かに関する説明はこちらをご覧ください。

2017年に発行した『VST Lovers』では、
様々な方が無料・有料問わず色々なVSTプラグインを紹介していますが、
この企画に、自動ミックスプラグイン「Neutron」をご紹介頂いた方が複数人いらっしゃいました。

当時「音を解析して最適なミックスを提案する」というコンセプトは、まさに未来的なものを感じました。

その後もバージョンが進むにつれて(執筆時点での最新版は「Neutron3」)よりその精度も上がり、
アマチュアが普段使いする用途であれば、これだけで十分なのではないかというレベルになっています。
実際、最近は私自身ほぼこれだけをミックスに使って完成させた曲もあります。

では、将来のVSTプラグインはどのような形になっていくのでしょうか?

音(特にボーカル)のリアルさ・柔軟さの追求

まず音質や音のクオリティを追求する方面は、
ボーカル以外の部分に関しては現状でもかなりのレベルまで来ており、
既にほぼ完成されているジャンルもあると感じます。

問題はボーカルですが、合成音声がより進化していくのは時代の必然でしょう。

これまではこの領域ではヤマハのVOCALOIDが先頭を走ってきましたが、
2020年に入ってNeutrinoが登場したり、
クリプトンも独自の音声合成技術を搭載した「初音ミク NT」の開発を進めるなど、
様々な音声合成の手法が競争を繰り広げる戦国時代に突入しようとしています。

これらは「人間の歌唱に近づける」だったり、「キャラクターらしい歌声を追求する」だったり
その方向性は様々ですが、リアルさ・調声の柔軟さなど、合成音声としてより高みを目指すという方針は
どこも変わらないものかと思います。

ハード・ソフト面が順調に進化を続ければ、
将来的には合成音声をある程度「実体化」させることもできるかと思います。
例えば、スマートスピーカーのような技術と組み合わせれば、
「声の指示により、イメージに合った歌い方にパラメータを変える」のようなことは実現可能でしょう。

作業の効率化・自動化

上に書いたこととも関連しますが、今後は作業の自動化というのがひとつのキーになってくると思います。

いかに作業者の負担を軽減し、効率的に制作ができるかという技術の発展です。

このブログではたびたび「曲の制作工程」を紹介しています。

(1)構成を考える
(2)作曲(メロディづくり)
(3)作詞
(4)編曲・打ち込み ※ボカロ調声も含まれる
(5)ミックス
(6)マスタリング

この工程のうち、現在は(5)ミックスや(6)マスタリングに関しての効率化が進んでいますが、
今後は、より前にある工程が自動化されてくることが予想されます。

上記の「声の指示により、イメージに合った歌い方にパラメータを変える」は(4)編曲の領域ですね。

今後は作曲支援(コードやメロディの提案)や、
言語・リズム解析からの作詞支援というのはもちろん、
編曲にしても、メロディ・歌詞・他のトラックを解析して最適なプリセットを提案したり、
流行を取り入れた音やプリセットを自動作成したりといった方面に進化していくことでしょう。

参考URL

Flow Machines – AI assisted music production
https://www.flow-machines.com/

コード進行やフレーズを生成するAIプラグインが発売開始。Orb Producer Suiteは、超優秀なDTMアシスタントだった | | 藤本健の “DTMステーション”
https://www.dtmstation.com/archives/31011.html

AI 作詞ツール Shikaki (シカキ)
https://shikaki.diatonic.codes/

最終的にはDTMという行為はなくなる?

こうして「(1)構成を考える」まで自動化された未来に
最終的に行き着く先は、自動作詞・作曲AIです。

著名な作曲家や作詞家のアルゴリズムを搭載したバーチャルボカロPが誕生し、
リスナーひとりひとりに今の心理に合わせた最適な新曲を一瞬で作る。

「機械が作る曲なんて人の心が通ってない」と批判されつつ、
多くの若者には受け入れられる
という状況が頭に浮かびます。

そのとき、机の前に座って人間が曲を作るという意味での「DTM」は過去の遺物になるのかもしれません。
あるいは、今でも人間のボーカルがそれなりの価値を持っているように、共存し続けるのでしょうか?

もっとも、もしかしたらそんな時代が来るときは、
リスナーのほうも人間ではなくAIのほうが大勢になっているかもしれませんね。

参考動画

【VOCACON2016】ボカロ未来予想【トークセッション】

3部構成となっていますが、
特にPart2「人間の聴衆じゃなければ聴いてもらう価値がないのか?」というくだりは
当時衝撃を受けた記憶がありますね。

でも、これ2020年という時代に改めて考えると、当時とはずいぶん価値観が変わってきたなと思っています。

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著者「アンメルツP」について

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