VSTプラグインの種類と概要。各カテゴリのおすすめVSTも紹介 | G.C.M Records

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VSTプラグインの種類と概要。各カテゴリのおすすめVSTも紹介

この記事は拙著『VST Lovers ~このVST(i)プラグインが熱い!~』の文章を再構成したものです。
(第1章 1-2「VSTプラグインの種類と概要」)

そもそもVSTプラグインとは何かに関する説明はこちらをご覧ください。

また、VSTプラグインの「選び方」については、こちらの記事に詳しく書いています。

VSTプラグインは、大きく2種類に分けられる

VSTプラグインは、「音源」「エフェクター」の2種類に大きく分類されます。

前者のことを「VSTi」(iはInstrumentsの頭文字)、
後者のことを「VSTエフェクター」(「VSTエフェクト」「VSTe」、もしくは単にこれを指して「VST」と呼ぶこともあります)などと呼ぶことが多いです。

VST本のサブタイトルは、「VSTi」と「VSTエフェクター」を両方取り上げていますよと明示したいために
『VST(i)プラグイン』と表記しました。

それでは、このVSTiとVSTエフェクターは、
実際の曲作りにおいて具体的にどのようなシーンで活躍するものが多いのでしょうか。

それを説明するにあたり、まずはこのサイトや著書でも度々取り上げている
「曲ができるまでの制作工程」を見てみましょう。

工程1:構成を考える
曲全体のテーマや展開、構成、楽器などを大まかに決めます。

工程2:作曲&作詞
コード進行、およびコード進行から歌詞を載せるためのメロディを考えます。
また、そうして制作したメロディに載せる歌詞も形にしていきます。

工程3:編曲・打ち込み
ピアノやギターなどの音源を打ち込んだり、実際に弾いたりして、曲を曲として成立させます。
本質的には「どのような楽器を使い」「それをどう打ち込むか」という決断の繰り返しです。

工程4:ミックス
曲としてより自然に聴けるように、ボーカルや楽器間の音量などのバランスを調整します。

工程5:マスタリング
ミックスによって調整した音源全体にエフェクターをかけ、最終仕上げを行います。

VSTプラグインは、主にこのうちの「工程3~5」で活躍します。

最近はコード進行の提案など「工程2」で役に立つものも少しずつ出始めてはいるものの、まだ少数です。

VSTプラグインのうち「VSTi」は、「工程3」の編曲・打ち込みの場面で使用するもので、
ドラムスやピアノ、ギター、シンセサイザーなどの文字通り音源(Instruments)となるものです。

一方、VSTエフェクターは、基本的には「工程4」「工程5」のミックスとマスタリングで
役に立つもの
と考えてください。

ミックス・マスタリングは、初心者向けの説明では
考え方や概要を取り上げるに留まることが多いですが、とても奥が深いものです。
ミックスやマスタリングを専門に手がけるエンジニアが
音楽業界の中では専門職として成立していることからも、それが伺えると思います。

同じ役割を持っているVSTエフェクターであっても、
メーカーによってそれぞれ特徴や仕上がりの感覚なども微妙な違いがあり、
それが各人の好みと結びついて、
ひいきのメーカーや個別プラグインが生まれるという状況になっています。

曲の制作工程から見ると、
「VSTiを使って打ち込んだ音」「VSTエフェクターでブラッシュアップしていく」
という流れが成り立っているともいえるでしょう。

VSTiの詳細カテゴリー分類

それでは続いて、VSTiとVSTエフェクターのそれぞれを詳細に見ていくと、
どのような種類のものがあるかの概要を触れていき、
各種類の中でも現在主流とされるものや、おすすめのもの、
過去にそのカテゴリーのVST紹介記事を書いていればその記事へのリンクなども張っていきたいと思います。

『VST Lovers』では、ここで分類しているカテゴリーごとに、
本文内で章分けして順番にVSTプラグインを紹介するというスタイルを採用しています。

まずVSTiについては、楽器の種類別に主にカテゴリー分けを行いました。

打楽器や鍵盤楽器など既存の物理的な楽器を再現するものに、
シンセサイザーや総合音源などを加えたものとなります。

総合音源

総合音源とは、VSTiのうち、下記の「打楽器」「鍵盤楽器」など
複数のカテゴリーの音源がひとつのVSTiにまとまっているもののことで、
これひとつを導入するだけで一通り作品の編曲ができるというものです。

音源が満足に揃っていない段階で検討すべきは、まずこの総合音源ということになります。

打楽器

叩いたり振ったりすることによって音の出る楽器全般の音源です。

(ベル等を除いては)他の楽器と違ってメロディを奏でるものではないため、
とりあえず打ち込みを行うだけなら比較的簡単な分類に属します。

ドラムスやパーカッションなどが属します。

Addictive Drums 2 – XLN Audio

鍵盤楽器

鍵盤を弾くことにより音の出る楽器です。

ピアノやエレクトリック・ピアノ(エレピ)、アコーディオンなどの楽器が該当します。

ピアノ音源などは多くのDAWにも付属はしていますが、販売されているVSTiには、
有名な実機を録音・サンプリングしたものなど、こだわりのある音源が多く見られます。

Truepianos – Welcome

Addictive Keys – XLN Audio

弦楽器

弦を弾く、または擦ることで音の出る楽器全般をこのカテゴリーに分類しています。

これらにはアコースティック・ギター、エレクトリック・ギター、
ベースといったバンドでよく使われる楽器に加えて、
バイオリンなどのストリングス音源が含まれています。

楽曲において華やかで印象的に使われる楽器が多いです。

ギター音源
ソフト音源 「REAL STRAT 5」 | SONICWIRE

ベース音源
IK Multimedia – MODO BASS

↓ストリングス音源

管楽器、吹奏楽器

息を吹きかけることで音を出す楽器です。

トランペットやホルンなどのブラス(金管楽器)、
サックス・クラリネットなどのリード(サックス系木管楽器)、
フルートやリコーダーなどのパイプ(フルート系木管楽器)などがこれにあたります。

Cinematic : Session Horns Pro | Komplete

シンセサイザー(シンセ)

ソフトウェアであるVSTiの本丸とも言えるカテゴリーであり、種類も非常に多いです。

一般的には電子的に合成された音を出す機器全般をシンセサイザーと呼ぶので、
そういう意味では全VSTiがシンセサイザーではあるのですが、
ここではシンセサイザー以外では出せないような特徴的な音色を合成によって出せることをウリにしている音源
というくらいの感覚で分類しています。

Software Synthesizer Synth1(無料)

Magical 8bit Plug | YMCK Official Website (無料)

ソフト音源 「SERUM」 | SONICWIRE

ソフト音源 「AVENGER」 | SONICWIRE

Nexus | reFX

その他のVSTi

上記いずれにも分類の難しいものです。

例えば、VOCALOIDのような「ボーカル音源」はそのひとつですね。

また、外部から取り込んだ音もしくは最初から内蔵されている音を割り当て、
分解再構築して楽器のように演奏できる「サンプラー」もVSTiの一種です。

Serato SAMPLE – Dirigent

created by Rinker
クリプトン・フューチャー・メディア

VSTエフェクターのカテゴリー分類

続いては、ミックスやマスタリング時に使用するVSTエフェクターのカテゴリー分けについてです。

VSTiに比べると初心者の方にとっては馴染みのない名前のものが多く出てくると思います。
ひとつずつ、ミックスにおいてどのような役割をするのかを含めた説明をします。

エフェクターの分類は人によってもそれぞれなのですが、
ここでは筆者が自身の手持ちエフェクターの整理にあたって実際にやっている分け方で説明します。

ダイナミクス系エフェクター

「ダイナミクス」とは、音の強弱や音量差のことです。

例えばボーカルのミックスを考えます。

人間にしろVOCALOIDにしろ、素の声の音量というのは1曲の間でもかなり差があります。
これを「コンプレッサー」というエフェクターを使用してある程度一定に均すことで、
音楽作品として聴きやすくなります。

また、特にVOCALOIDの場合は滑舌の良さというのも重要なポイントです。

これは、声の出だしとなる部分の音量をより強くすることで改善します。
この目的には、コンプレッサーのほか、
「トランジェント・シェイパー」と呼ばれるエフェクターを使うこともあります。
トランジェント・シェイパーは、ドラムを太くする目的などにもよく使われます。

また、コンピCDなどの作品をマスタリングする際に重要な要素の一つとして、
最終的な音量・音圧の統一があります。

こういった、コンプレッサー、リミッター、トランジェント・シェイパーなどの、
「あるタイミングで音量に対して作用する」エフェクターを、
総称して「ダイナミクス系」
と呼ぶことがあります。

この次に紹介するカテゴリー「特定音域作用系エフェクター」との違いは、
「高音だとか低音だとかをあまり区別しないで、とにかく音量全体にあるタイミングで作用するもの」
と考えると分かりやすいでしょう。

コンプレッサー
Renaissance Compressor Plugin | Waves

トランジェント・シェイパー
Effects : Transient Master | Komplete

↓リミッター

特定音域作用系エフェクター

先のダイナミクス系に対して、こちらはどちらかというと
「タイミングに関してはあんまり問わないけれど、特定の音の高さの音量に対して作用するもの」
集めたカテゴリーです。
多分あんまりこういう名前で入ってる人はいないと思うんですが、
このような分類する方は私は分かりやすいとは思ってはいます。

具体的な活用シーンを考えます。

何種類もの楽器やボーカルなどを重ねていくと、
「ボーカルの声とオケの音がなんとなくケンカしてしまっている」という状況が得てして発生します。

こういった場面では、オケの音の中で、
ボーカルとかぶっている音の高さ付近の音量だけを少し下げることができれば、
全体的な印象をあまり変えることなしにケンカだけをうまく「仲裁」できます。

これを実現するのが「EQ(イコライザー)」というエフェクターです。

EQは特定の音域を指定して、その音域の音量を上げ下げできるもので、
まさに特定音域作用系エフェクターの代表例と言えるものです。

このカテゴリーに属する他のエフェクターとしては、
特定の音の高さ以上(以下)の音をばっさりとカットしたい時に使う「フィルター」
ボーカルや楽器の「美味しい音の高さ」の部分をピンポイントで強調できる
「エキサイター」「エンハンサー」
ボーカルの耳障りな音域を削って耳に優しい音にできる「ディエッサー」などが該当します。

数あるエフェクターのうち、コンプレッサー、リミッター、EQの3つに関しては
どの曲であっても、ほぼ間違いなくミックス・マスタリングの際に使用する基本的なものとなります。

それゆえメーカー各社より非常に多くのプラグインがリリースされており、競争も激しいものとなっています。
用途別に複数種類のコンプレッサーやEQを使い分ける方も多いです。

フィルター
BiFilter2 VST AU plugin

ディエッサー
DeEsser Plugin | Waves

↓EQ(無料)

歪み系エフェクター

名前の通り、音を歪ませたい時に使うエフェクターです。

先の2カテゴリーのものは音量を上下させる役割でしたが、
こちらは音そのものの質感や雰囲気を変えたいときに有用です。

その代表的なものとして「アンプシミュレーター」があります。

実物のエレキギターをレコーディングやライブで弾くときは、
素の音ではなくアンプ(パワーアンプ)を通して歪ませた音でもってスピーカーから出力します。

そのアンプをPC上で再現したものがアンプシミュレーターというわけで、
エレキギター音源から出した音に対して適用すると、それっぽいギターの音になって返ってきます。

他の歪み系エフェクターとしては、
プリアンプ(パワーアンプの前に通して音量を増幅する機材)や
真空管、テープを通した音をシミュレートして、音に少しだけ歪みを付け加えることで
その音の存在感を強調したりアナログ的な暖かみを演出できる「サチュレーター」
音を昔の機器で再生したかのようにローファイにする「ビットクラッシャー」などがあります。

アンプシミュレーター(無料)
Guitar : Guitar Rig 5 Player | Komplete

サチュレーター(無料)
Softube | Saturation Knob – MI7 Japan

メロディ系エフェクター

「音の高さそのものを変える」エフェクターです。

この代表例としては、「Auto-Tune」に代表される「ピッチ(音程)修正」系のエフェクターが挙げられます。

ボーカルの不安定なピッチを改善する「守り」の目的はもちろん、
揺れを完全に無くして無機質な声に仕上げる(いわゆるケロケロボイス)という、
曲の世界観を積極的に作り上げるための「攻め」にも使うことができます。

また、同様の機能を、修正目的というよりはむしろ積極的にピッチを大きく変えることで、
すでにあるメロディーからハモリを作ってしまおうという趣旨をメインとしたエフェクターは
「ピッチシフター」「ハーモナイザー」と呼んだりします。

ピッチ修正(無料)
ソフトウェア – KeroVee 1.61 | g200kg Music & Software

空間系エフェクター

主に、音の前後左右の広がりに効果をもたらすものを空間系エフェクターと呼んでいます。

音量やパン(音の左右への配置)調整だけではどうも浮いてる音があったり、
音が馴染まないといった感覚を持つことがあります。

そこで活躍するのがこれらのエフェクターです。

部屋の大きさなどのパラメータから計算により残響音を作る「リバーブ」
やまびこのような遅延音を発生させる「ディレイ」が代表例で、
この二つはボーカルのミックスの際など、多くの楽曲で必須ともいえる存在です。

元の音に厚みや立体感を持たせたり二重に鳴っている(ダブリング)ような演出を実現する「コーラス」や、
音の左右を広げたり奥行き感を調整できるエフェクターもあります。

リバーブ(無料)
TAL Software「TAL-Reverb-4」

奥行き調整(無料)
A1StereoControl – A1AUDIO – VST, AU, AAX Plugins for MAC & PC by ALEX HILTON

その他のエフェクター

上記5つのいずれにも分類が難しいものや、複数の効果をもたらすものもあります。

様々なエフェクターを内臓して適宜その機能を切り替えられる「マルチエフェクター」はそのひとつです。
DJの際に使用されるような、アグレッシブに音の変化を起こせるエフェクターが多いです。

その一方、ひとつ買うだけでコンプレッサーやリバーブなど複数の機能を持っている
エフェクターのパッケージのようなものも「マルチエフェクター」と呼ばれています。
こちらは「MDE-X」 などがその例です。

ミックスやマスタリングのために、ひとつのプラグインにダイナミクス系や特定音域作用系のエフェクターを
一通り内蔵して処理の完結を目指すものは、特に「チャンネルストリップ」とも呼ばれています。
自動ミキシングで知られる「Neutron」などはここに属します。

ユーティリティ系VST

楽器ではないけど、エフェクターと呼ぶにも少し違うVSTプラグインです。

鳴っている音に関する様々な情報を数字やグラフで表示する「アナライザー」など、
曲に直接の影響は及ぼさないけど様々な用途で役に立つものばかりです。

IK Multimedia – T-RackS 5 CS(アナライザーは無料で利用できます)


34名のボカロP・DTMerらに 「実際に作品に使用して、役に立ったVSTプラグイン」
「使った曲へのリンク」とともにご紹介頂きました。
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