ボカロPが「技術書典7」にサークル参加した結果を振り返る【イベントレポ】#技術書典
9月22日に技術書オンリー同人イベント「技術書典7」にサークル参加しました。
サークルスペースで新刊『令和時代の個人サイト制作入門』や
既刊の『ボカロビギナーズ!ボカロでDTM入門 第二版』や『VST Lovers』を
手に取って下さった皆様、ありがとうございました。
技術書典というイベントは一次創作に近く、
またIT畑のマインドから比較的オープンな文化が根付いております。
今回私もそれに倣い、イベント参加について振り返りをしたいと思います。
目次
被チェック数と頒布数
技術書典のサークルページでは、サークルチェック(お気に入り登録)された数が
「被チェック数」としてサークル主にはわかるようになっています。
「最終被チェック数≒頒布部数」という結果が過去には出ているらしく、
これを新刊の発行部数のひとつの目安にできますが、
私の場合は「半分合ってるし半分間違ってる」という、どちらとも解釈できる結果になりました。
具体的な数字はここでは触れません。
被チェック数がすべて新刊にかかっている数だと思って部数を用意したのですが、
実際の新刊頒布数は、被チェック数の半分ぐらいというところでした。
じゃあ残りの半分はどこに行ったかと言うと既刊ですね。
技術書典には初サークル参加なので実質的にはすべて「新刊」ではあるのですが、
今から考えると、新刊の個人サイト本ではなく
『ボカロビギナーズ!』『VST Lovers』などのボカロの既刊目当てで
サークルチェックしていた方も結構いたのかなと思います。
その既刊と新刊の部数を足すと、被チェック数よりわずかに多いという結果になりました。
その意味ではある意味予想は合ってたのかもしれません。
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個人サイト本を作ってみて
さて技術書典向けの新刊は、2ヶ月で140ページを書く突貫スケジュールとなり、
台風停電の件もあってギリギリ完成となりました。
今回は印刷に、技術書典向けの締め切りが一番柔軟だった「日光企画」さんを
初めて利用させて頂きました。
本文PDFが、いつも他社(大陽出版さん)で入稿している方法そのままでいけるかという部分に
不安もありましたが、時間が短い中で印刷の仕上がりには非常に満足しております。
特に図の仕上がりが非常に綺麗なことに感動しました。
今後も機会があれば利用していきたいと思います。
本を作ってみて感じたのは、
やはり技術をもっともっと勉強していかなければいけないということですね。
同人作家やミュージシャンのような、サイト作り初心者の方に向けて
平易に解説することがコンセプトでした。
技術レベルとしては、レンタルサーバーを用いたWordPressの導入とカスタマイズであり、
最近のWeb制作、HTML5やCSS3などに詳しい人であれば
当たり前の内容が書いてあるとは自覚はしています。
そしてこの本のターゲットとする層が技術書典にどれくらい実際に来てたかというと、
少なくともメインの層ではないことは確かです。
とはいえボカロや音楽とは直接は関係がない内容で、
技術書典以外で新刊として発行するとすればコミケくらいだと感じていました。
そういう意味では、このイベントの存在をモチベーションにしたからこそ作れた本ですね。
また、本を作りながら自分自身の思考も整理できたので、
これをきっかけにさらに様々な知識を身につけていきたいです。
今回新刊はBOOTHでダウンロード販売も実施中ですが、
早くも何部かお手にとっていただいてるようで、
ダウンロード販売にも一定の需要があることはありがたいです。
現金と「技術書典かんたん後払い」の利用比率
しかし技術書典周りのカルチャーはやはり興味深くて面白いです。
今回は新刊を紙とダウンロードカードのセットとして1,500円で頒布を行いました。
セット以外に紙単品・ダウンロードカード単品で1200円というオプションも用意して、
「特別な申し出がない限りはセットを勧める」というオペレーションにしたとはいえ、
セットを実際の購入率が95%以上だったというのは個人的には驚きでした。
ボカロや音楽まわりの同人活動の場合
「まず曲を無料でYouTubeに公開し、気に入った人がCDなどのフィジカル媒体を買う」というモデルなので、
ちゃんと値段がついた電子媒体がバンバン売れるというのは
本当に技術書典ならではだと思いました。
また「技術書典かんたん後払い」のシステムもありがたく利用させて頂きました。
現金と後払いの比率は最終的には2対1ぐらいになりました。
他のサークルさんのレポートを見ていると、平均よりやや現金払いが多い感じですね。
また興味深いのは、前半に後払いを利用する人の比率が高かったことです。
最初の2時間は6対4ぐらいの比率だったのですが、
終盤の3時台、4時台に入る頃にはほぼ全てが現金払いに変わりました。
これは、私の所には比較的ライトな来場者が集まった結果だと推測されます。
後払いというシステムはあまり利用せずにフラッと来て、
立ち読みをするほど余裕のある方が後半多かったのではと思いました。
なお、今回はかんたん後払いシステムのダウンロード特典機能は利用せずに
シリアルコードを個別でつけたダウンロードカードを制作する形をとりました。
私の場合は他のイベントにも多く出るために、
どのイベントに出ても同じ値段で同じモノを渡したいという思いからでしたが
ここは各人の活動形態によって判断が分かれるところでしょう。
適度な営業は大事
そんな層が集まる中で、今回営業の大事さを思い知りました。
本文のサンプルはある程度公開しているものの、それだけでは判断がつきにくいところもあります。
短い間ですが、本の全文をその場で立ち読みできるのが会場のスペースです。
技術書典で私は全くの新規参入であり、しかもどちらかというとメインストリームからは外れていた存在です。
だからこそ読んでもらうこと、全文をその場で把握してもらって
来場者に内容が合うかどうかを判断できる機会を提供することがとても大事だと実感しました。
会場に多くはないだろうけど、この本に興味のある刺さる方、
例えばミュージシャンの方や、
Web制作はしてないけど別ジャンルの技術で活動している方というのは必ずいるはずだと思い、
そういった方にアプローチしていく積極姿勢ですね。
今回スペース「こ04」の立地条件として、以下がありました。
・2階の入口付近に位置していた
・3階の、同種の本があるだろうweb島とはそもそもフロアが違う
(「ゲーム」という垂れ幕がある場所にいました。webでも音楽でもなく・・)
入口付近なので人はすごい流れてくるんですが、
お目当てはみんなその先にあるのでほとんどが立ち止まらない場所であり、
しかも戻ってくることも少ない。
ここで気づいてもらえなければ本当に存在さえ知られずに帰ってしまうケースが
多かったと思います。
そんな中で大事さを思い知ったことがあります。
適度に営業(売り込み)することです。
最初の2時間ぐらいは主に座りつつ来場者に対応していたのですが、
あまり人が立ち止まりませんでした。
そのため1時過ぎからは基本的に立ち上がって、売り子さんと二人で見本誌を持って、
来場者に目線を合わせたり興味を持ってくれる人がいたら積極的に本を渡していく。
そしてたまにサークルの中から「WordPress初心者向けの本です」と声を出すという風に、
過度な呼び込みにならないように気をつけつつアピールを行っていくスタイルを取りました。
そうして一人二人が読み始めると、
どんどん気になる人がサークルを覗き込んでくるので、
そういった方に向けてすかさず見本誌を渡していきました。
読まれない本は存在していないのと同じ。
少しでも多くの人に「自分に向けた本か、Not for meなのか」を
判断してもらうことをなにより求めていました。
たぶん最初の2時間と同じ対応で最後までいたら、1.5倍は売上が違っていたのでは
ないかと思います。
で、今回WordPressの分かるリアル知人女性に売り子をお願いしたのが大正解でした。
私自身はこういった売り込みがあまり得意ではない人間ですので…。
技術のイベントなのに大事なのが営業という結論に至るのはちょっと皮肉的ではありますが…。
支払いはアプリで、作品も電子だとすると「じゃあ人間がいる意味は何だろう」という話になりまして、
結論としては「コミュニケーション」にどうしてもなるなと思いました。
売り込みだったり、作品の説明だったり、他の方との交流といった部分ですね。
次回以降の参加と、今後の展望
さてこの技術書典ですが、次回以降参加していくかは現時点では未定です。
既刊頒布のため参加したい気持ちもありつつ、
しばらくは出せそうな技術的なネタが自分の中では少ない状態です。
他にやりたいこともたくさんあります。
ただ今回のWordPressの本に関しては、技術レベルとしては高くはなくても、
このような切り取り方、まとめ方で一直線にクリエイター向けとして
個人サイト作りを説明することは、自分しかできないものと確信をしております。
今回自分のスペースにつきっきりの状態となり、
他のサークルさんはあまり回ることができなくて残念でしたが、
BOOTHで気になる本をどんどん買っていきたいと思います。
Webに関する技術も深めつつ、ボカロPとしての活動も充実できるよう
今後も頑張ります。
現在新刊の通販は「BOOTH」と「とらのあな」で行っております。
BOOTHでは「冊子+ダウンロードカードセット」と「ダウンロード配信」、
とらのあなでは「冊子版のみ」(手数料がついて少し高いですが、店頭で買えば送料ぶん逆転します)
を取り扱っております。
また、無料サンプルPDFを第6章まで公開していますが、
ブログの方はいま第5章までしか書いてないので、第6章を早めにアップしたいのと、
あとブログではもう少し先のことも書いてしまいたいと思っております。
第7章の「テーマ選び」、第8章の「プラグイン選び」まで書かないと、
「ブログで見せる記事」としては中途半端になってしまっているという思いが強いためです。
少し時間はかかるかもしれませんが第8章までブログ記事を書いて、
現在本の購入を悩んでいる方がもしいらっしゃいましたら、
改めて本が自分の方向性に合ってるかどうか確認していただけると幸いです。
また今回の本の制作で得た知見として書きたかったことに
「シリアルコードつきの自作ダウンロードカードの作り方(conca利用)」と
「VOICEROIDで文章校正をすることのメリット」があるのですが、
これらは単独記事としてそれぞれ書けてしまいそうなボリュームのある内容ですので
時間があれば後日単独の記事としてアップできればと思います。
著者「アンメルツP」について
アンメルツP(gcmstyle / 安溶二)
ボカロP。鏡音リン・レンなどのVOCALOID(広義)を歌わせたオリジナル曲・カバー曲を2008年から作り続けています。代表作にゲーム『プロジェクトセカイ』収録の高難易度曲「人生」、著書に『ボカロビギナーズ!ボカロでDTM入門 第二版』(インプレス)など。
音楽ジャンルに関係なく、キャラクター性を活かしたボカロ曲を制作しています。
楽曲ストリーミング配信、カラオケ配信(JOYSOUND/DAM)多数。