鏡音リン・レン「#かがしら」歌詞の意味を徹底解説!イラスト・動画に込められた想いとは!?
アンメルツPです。
タイトルはありがちなJ-POPやボカロ曲の評論ブログ風にしてみました。
目次
はじめに
2019年7月20日に鏡音リン・レンによる新曲「かがしら」こと、
「鏡音リン・レンって誰?関係性は!?調べてみました!」を投稿しました。
11年くらい調べてきましたがいまだに鏡音がよくわかりません!
niconico・YouTubeともにたくさんの再生ありがとうございます。
「鏡音尊い」「布教に役に立つ」「草」など様々な反響を頂いております!
多くの方と一緒に作った動画ですので、ぜひお楽しみください。
この記事では、Twitterで5日に分けてツイートしていた制作の話をまとめています。
この曲に関してはとにかく色々なことを語りたかったのでとても長文になっています。
この曲にご興味のある方は、ぜひご覧いただけると幸いです。
歌詞はこちらの記事をご覧ください。
曲調について
もともとCD『RINLENMANIAを自分でやってみた!2』に向けての描き下ろしだったので、
一番最初に決まったのは曲のテンポ(150BPM)でした。
自分の曲をメドレーにする際に、
「お嬢様と執事の冒険」(145BPM)と「頼りになるぜ☆アルパーカー!」(155BPM)の
真ん中くらいのテンポの曲が欲しかったのです。
テンポが決まったときに、あらかじめ頭にあった「かがしら」のコンセプト(後述)と
合いそうだということで制作を始めることに決定。
この歌詞って、伝え方を間違えると説教臭くなるんです。
なのでひたすら明るくいこうと。
そこでラテン系、しかもサンバに近い曲調を意識して作りました。
サンバってJ-POPでは異端だけど、突然変異的にヒットが出るんですよ。
「風になりたい」(THE BOOM)とか「マツケンサンバII」(松平健)とか…
そのポジションを目指そうと思いました。
「あれも尊い」「これも素晴らしい」とよくわからないけどお祭り的に無邪気に言えたらいいな!
ってことで、それに合う曲調なのではないかと思います。
特に、何も考えずに体が動き出しちゃうようなリズム・パーカッションの組み方は
かなり時間をかけて考えていきました。
メロディで最も重要視したのはもちろん「いかがでしたか」 の歌詞が載るところです。
「アルパーカー」のようにワンフレーズ中毒系となるので、
いろんなパターンを考えて自然に口ずさんでもらうことを目指しました。
そして、 ブログ(文章)の展開を曲の展開に当てはめていって完成しました。
Aメロ 紹介文
Bメロ 曲を気に入った人にオススメ
サビ いかがでしたか
ギターソロ スポンサーリンク
サビを4回繰り返して起承転結
ライブやクラブなど色んなところで盛り上がってくれたら嬉しいです。
コンセプト・歌詞について
「いかがでしたかブログ」とは
「いかがでしたかブログ」とは、
「中身が薄いにも関わらず、SEO対策だけでGoogleに
『この記事はユーザーに役立っている』と勘違いさせて検索上位に登場するネット記事」
のことを揶揄した言葉です。
煽るようなタイトルをつけることで「流入率が多い=ユーザーが必要としている」と勘違いさせ、
結論を引き伸ばすことで「滞在時間が長い」と勘違いさせているのです。
ネット黎明期からイタチごっこのように現れては対策されを繰り返していましたが、
2019年に入ってこれが「いかがでしたかブログ」というキャッチーな名称で
一般層にも知られるようになりました。
詳しい解説は、ニコニコ大百科の名記事をぜひご覧ください。
いかがでしたか?とは (イカガデシタカとは) [単語記事] – ニコニコ大百科
ボカロは「分からない」から面白い
いかがでしたかブログは、
「結論を引き伸ばしたあげく最後は『分からない』で締める」のが定番です。
しかしVOCALOIDや鏡音リン・レンの場合は、この
「自分で勝手に作れる」=「調べてみても『分からない』からこそ面白い」こそが
実は本質的な魅力のひとつであります。
「調べてみました」「いかがでしたか」とボカロを絡める発想自体は
先人がたくさんいらっしゃって、ツイートなどでもお見かけしていました。
ですが曲でやろうとする人を案外見かけなかったので
今回挑戦してみようと決意。
何か文字(商品の説明とか)を読む曲自体はこれまでもあったのを思い出し、
このネタを私自身の過去の経験をフル活用して肉付けし、
自分なりに色々と発想を広げてコンセプトに仕立てていきました。
2012年発行コンピ『ふたりのうた』の経験
鏡音デュエットソング集「ふたりのうた -RL DUO Collection-」特設ページ
「様々な関係の鏡音」をテーマに、いろんな絵師さんに
ジャケットやクリアファイルで使用するための絵を描いて頂きました。
ここでの経験を活かしています。
Webデザイナーとしての経験
最近は仕事でWebサイトをたくさん作っていて、
また今年に入ってからは自分のブログの集客にも力を入れています。
どうやったらサイトに人が来るのか、
またそのテクを悪用?した「いかがでしたかブログ」の仕組みなども
大体わかっているつもりです。
「us」での経験
2017年に発表したコンピCD『gLoR10us』向けの楽曲「us」 。
この曲は絵なしで動画発表しているのですが、
それは「イラストを使ってちゃんとした表現をしようとすると、
この曲には絵師さんが100人くらい必要になるので現実的に無理」という理由がありました。
多様性を表現しつつも現実的なラインを探した結果が今回の曲です。
そんなわけで作品上はさらりと「よくわからないけど楽しい!」という雰囲気を出したつもりですが、
これまでのボカロPとしての経験を全部詰め込んだ、密かな集大成的作品となります。
以前からこのような曲を作りたいと思っていたのが、ようやく形になったと思います。
YouTubeで聴く若いボカロファンに向けて
2007~8年の初期曲でYouTubeにP本人が上げている作品は少なく、
すなわち印象的なキャラソンの多くが転載です。
10年経ち、ボカロそのものの魅力を伝える曲を
YouTubeの若いファンにも届けたい思いも大きかったです。
「楽器でありキャラ」「歌わせる」の強調もそのためです。
「Tell Your World」のGoogleのCMのわかりやすさが今でも強烈に印象にあって、
そういうものを鏡音で形にしたいと日々思っていました。
絵師さんは自由な創作に魅力を感じて鏡音を描いている人が多い(と個人的には思っている)けど、
ボカロPとして、楽曲としてそれを肯定してあげられるものが意外にない。
というのでこういう存在があっていいのではないかと思った次第です。
鏡音廃の方には納得感を、
そうでない方には純粋に鏡音の楽しさと知識が伝わればと思います。
歌詞1番「概要」に関する補足
「リンはオケに負けない張りのある声が魅力的で、レンは腹の底からの声に本音を載せやすい」
同じ声優さんの声の使い分けとして
リンの声は、高い位置から出す、明るさ、理想を求める声。
レンの声は、低い位置から出す、本音、現実を引き出す声。
ということを普段からずっと感じています。
2014年に私の発言からこういった議題につながったTogetterが
より理解に役立つかもしれません。
人はなぜレンを持つと高速歌唱を控えめにしていつもよりメッセージ性の高い曲を作るのか – Togetter
「良くも悪くも二番手として自由にやっているようです」
初音ミクさんは、ファンに常に新しい世界を見せ続けている大きな存在です。
一方でリンレンは、ミクに比べると商業・公式の活動規模は小さいものの、
比較的自由で実験的な試みができる存在という位置付けをされているところがあります。
それゆえ公式で補完できないところを同人でやろうという姿勢も活発です。
ミクさんは強いけど、そのおかげで色々自由にやれているのも
鏡音という存在なのかなと思います。
ここらへんは『ボーカロイド音楽の世界2017』に寄稿したことを
まるまる要約したような感じですね。
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ボカロ調声について
今回は「us」でも用いた「多様性を表現するための声の変化」をどうしてもやりたいと思っていました。
そのため
「Append声が映えるシチュ」
「リン・レンが大人っぽくor幼い声になるシチュ」
は取り入れる必要があり、考慮してシチュエーションを絞っていきました。
レン「おや、妙に距離も近いですね???」
ここはピッチベンドの変化で声がうわずるようにしました。
PBSは12に設定しています。
またここに映ってないですが、グロウルもパラメータを変化させつつ細かく入れています。
リン「手振るレン、泣くリン…切ないです…」
ここも一緒でピッチベンドを変えています。
先ほどと違うのはフレーズ全体で細かく動かしていることで、
これで泣きそうな声の震える感じを出そうと思いました。
声の変化は、クロスシンセシスで大きくリンWarm成分を増やしました。
レン「少しレトロな服??二人に何があったのか!?」
ここもレンSeriousに寄せた声です。
「VOCALOID5」にクロスシンセシスが無いのがV5単体になかなか移れない理由のひとつで、
今回もPiapro Studioで調声しています。
普段も完全にPowerではなく、10%くらいWarmやSeriousを混ぜてます。
幼い/大人っぽいリンレン
3番ではGender Factorの変化で
「幼いレン&大人っぽいリン」「幼いリン&大人っぽいレン」の声を出しました。
一度聴いて「あ、声が変わってる」と気づいてもらえることが大事なので、
かなり極端に振ってます。
かなり声を変えても「鏡音」だと認識してもらえる、その幅の広さが好きです。
イラストについて
「たくさんの絵師さんが鏡音リン・レンの関係性をそれぞれの絵柄で描いている」ことを表現したく、
様々な絵師さんに声をかけ、
シチュエーションごとに全部で7枚のイラストを描いていただきました。
各絵師さんには基本的には「歌詞の通りのシチュエーションでお願いします」と声をおかけし、
その他は個別に相談しながらそれぞれのイラストを描いていただきました。
リンレンの衣装については
・最初(原さん)と最後(うたおりさん)のイラストはV4Xデフォルトを指定
・他の方にはデフォルト以外(私服もしくはデフォルトの少しアレンジくらい。既存曲イメージやモジュールは不可)
でお願いしました。
1枚目(概要):原さん
収録CDのジャケットを描いていただいた関係で、
最初にこの曲を聴いた原さんに真っ先にお願いしました。
「概要」ということで公式寄りの構図です。
「楽器でキャラ」なのを強調するための背景ということで
ボカロエディタはどう?と提案して描いて頂きました。
2枚目(家族):なじょさん
仲良くゲームをしているほのぼのとした鏡音を描ける方、ということでお願いし、
歌詞に忠実な楽しいイラストに仕上げて頂きました。
関係性は「家族」としか指定していません。
デフォルト少しアレンジの部屋着が素敵な一枚です。
微妙な違いが尊いですね!
3枚目(恋愛):れもくりんさん
すぐ上のイラストが「家の中」ということで、
こちらは屋外や公共施設で、リンが積極的な付き合いたてのデートを
イメージして描いていただきました。
斬新な構図と青基調のカラーが強く印象に残る
水族館デートの絵に仕上がりました!
4枚目(別れ):由杞さん
シリアスで等身高め。
西洋ファンタジーだと後ろのイラストと被るので和風寄りがいいかも?とお願いしました。
歌詞も具体的なシチュで縛りが多いにも関わらず素晴らしい仕上がりでした。
赤系で偶然前との対比にもなっていますね。
5枚目(教師と生徒):かなみさん
レンは実年齢よりほんの幼く、リンは新任〜数年目。
恋愛色を抑えつつ関係性に萌える難しいお題でした。
他の方がやってない「漫画風」を提案し、
数パターンを提示を受け話し合いながら進めていった一枚です。
6枚目(童話風):帽子屋さん
リンは若干幼くレンは少し成長。
西洋ファンタジーのような世界観ということで進めました。
民族系のイメージも少し入れたとのことです。
旅立ちのワクワクする雰囲気が伝わる帽子屋さんらしい一作。
7枚目(ボカロ鏡音):うたおりさん
この曲の中でも特に重要な役割を持つ一枚だったので、
入念に打ち合わせをしながら作りました。
最初のラフ構図制作はSkypeでその場でラフを描いて頂き、
それを見て修正し詰めていきました。
たくさんのシチュエーションを歌っているボカロと、
それを見守っているあなた(ボカロPや絵師さん)のイメージ。
鏡音の本質を一枚にぎゅっと濃縮しました。
画面上部に浮かべているシチュは「正義と悪で戦う二人」や「共依存」など、
直前の歌詞のものになっています。
動画について
コンセプトを練る段階から、
動画はこのような「いかがでしたかブログを模して上から下に歌詞を流す方式」
に
することは決めていました。
最終的に動画にして映えることも意識しつつ曲や展開を作っております。
「動画のブログがリアル」との反応がありましたが、
そもそもはこのブログであらかじめ非公開の記事を作って、
それをスクリーンショットにしたものを加工して動画の元となる素材を作りました。
主に素材作りとイラストのやりとりのほうに時間をかけていまして、
動画作り自体は曲に合わせてひたすら下にスクロールさせるだけなので意外と楽でした(1~2日くらい)。
YouTubeとniconicoでは、それぞれの動画サイトの仕様に合わせて
ほんのちょっとですが最後を変えています。
Awazom「鏡音リン・レンV4X」
ブログ記事では本物のAmazonの画像を引用表示していますが、
動画上での鏡音パッケージの写真は自宅にあるものを撮影しました。
Awazom「ペンがついてる最新タブレット」
タブレットのイラスト画像は「イラストAC」からの素材です。
商品名そのままでも良かったとは思うのですが、ぼかした方が面白いかなと思いますw
(あとはもし商業化した場合に色々面倒臭くなさそう)
ちなみに解説するのも野暮だとは思うんですが、「Banana」は「Apple」のパロディです。
スポンサーリンク「鏡式会社スポンサー・ソロ」
イメージとしては「F○2ブログ」などで見かける胡散臭い広告を目指しました。
写真はPhoto ACからの素材です。
「著名人絶賛」→「煽り文句」→「なんかすごい変化した」というテンプレを忠実に表現。
ギターソロのノリで出てくる広告なので「スポンサー・ソロ」です。
背景の小物について
右にリン・左にレンイメージという取り合わせのアイテムを、
定番のみかんとバナナ含む12組用意しました!
曲中に同じものはひとつも出てきません!
一瞬で流れ去るものもあるので、
改めて動画を細かくご覧になると色々な発見があると思います。
最後に
曲を聴いての感想などありましたら、
ぜひ「 #かがしら 」のハッシュタグをつけてTwitterなどでツイートしてくださると嬉しいです!
ぜひ周りの鏡音ファン・ボカロファンの方々に紹介・拡散してください。
アップ直後だけでなく、数年という長いスパンで見て
「鏡音を紹介するならこの曲!」みたいな立場にこの作品を育てていければと思います。
鏡音はどんな関係性でも正解です。
もちろん単体で愛でても正解、他ボカロと合わせても正解。
この曲ひとつではカバーしきれない鏡音の魅力を各自探してみてくださいね。
ピアプロでmp3とカラオケを公開しています!
ライセンス条件に従って頂ければ、推しをプレゼンする替え歌も大歓迎です。
piapro(ピアプロ)|オンガク「鏡音リン・レンって誰?関係性は!?調べてみました! #かがしら」
著者「アンメルツP」について
アンメルツP(gcmstyle / 安溶二)
ボカロP。鏡音リン・レンなどのVOCALOID(広義)を歌わせたオリジナル曲・カバー曲を2008年から作り続けています。代表作にゲーム『プロジェクトセカイ』収録の高難易度曲「人生」、著書に『ボカロビギナーズ!ボカロでDTM入門 第二版』(インプレス)など。
音楽ジャンルに関係なく、キャラクター性を活かしたボカロ曲を制作しています。
楽曲ストリーミング配信、カラオケ配信(JOYSOUND/DAM)多数。