niconicoにアナリティクス機能が実装!仕様・データをYouTubeと比較してみた
目次
はじめに
こんにちは、ボカロPのアンメルツPです。
今回は、niconico(ニコニコ動画)の最新バージョン「Re」にやっと実装された
アナリティクス(アクセス解析) 機能の見方・使い方を紹介します。
すでにこの機能については、2020年7月27日に発表された直後から
多くの方がブログで書かれてはいるんですが、
今回の私の切り口としては、YouTubeとの比較というところを見ながら私らしい話をできればと思います。
niconicoのアナリティクス機能とは
パソコン版の画面で(スマホ版の画面は無いので、Chromeアプリの「PC版サイト」などで見る必要があります)、
新しくなったniconicoのマイページから「投稿動画・シリーズ」 をクリックすると、
投稿動画およびシリーズ一覧の画面に飛ぶんですが、
画面上部の「投稿動画一覧」と「シリーズ」のさらに横に「アナリティクス」という項目があります。
ここをクリックすると、アナリティクスの画面に遷移します。
個人的には10年以上待っていた機能ですね。
このアナリティクス機能では
・再生数、コメント数、マイリスト数、いいね数の推移
・視聴者の主な年齢層や、性別
・ユーザーのデバイスや、アクセス元(どこから来たのか)
これを、投稿動画全体、あるいは個別の動画について、データで表示してくれます。
これにより、niconicoに投稿するための戦略を立てやすくなります。
今まではこれがなかったために、こういった部分は本当に手探りでやるしかありませんでした。
一方、YouTubeでは「YouTube Studio」の中にアナリティクスの機能が昔からあり、
投稿した動画の分析に非常に役立っていましたした。
その10年間の分析データをまとめたものは私の「データで考えるYouTubeサバイバル術」という同人誌に
今年の2月にまとめましたので、そちらをご覧頂ければわかりやすいと思います。
(ダウンロード版もあるのですぐ読めます)
今回は、データから考えるYouTubeとniconicoの比較を主に話せればと思います。
あくまで私のデータなので、他の人はまた違った結果・考察ができそうですが
参考にしていただければと思います。
※データは2020年8月6日~11日にかけて、各サイトにてスクリーンショットを撮ったものです。
サマリーレポート
まずアナリティクスのトップ画面である「サマリーレポート」を見ていきます。
あなたの全投稿動画
最初の「あなたの全投稿動画」の見た目は、
YouTubeの「チャンネル アナリティクス」の初期画面とかなり似ていますね。
全動画の合計でいくつ数字が増えたのかを、デフォルトだと一ヶ月ぶん見ることができます。
ここもYouTubeではデフォルトだと過去28日間のデータが表示されるので、ほぼ一緒です。
私の場合、niconicoでは一か月間で6,000再生あまり、
それに対して、YouTubeの方は28日でおよそ23,000再生されていました。
数字だけ見るとYouTubeの方が数倍見られています。
これは、「使えない部下 悩める上司」のような、
YouTubeの方で特にウケが良い動画(niconico1万、YouTube40万再生)が
継続的に再生されており、全体を引っ張っているためです。
それ以外にも、コメントやマイリスト、「Re」から導入された「いいね!」数の遷移が見れます。
「再生数」のチェックを外すと見やすくなると思います。
再生数が伸びている動画
サマリーレポートを下にたどっていくと、次に目に入るのは「再生数が伸びている動画」です。
YouTubeでもチャンネルアナリティクスのトップ下「この期間の人気動画」で見れる部分ですが、
niconicoではベスト3の動画が最初からグラフつきで表示されているところが見やすいです。
YouTubeでは、ベスト10が表示される代わりに期間内の平均視聴時間・視聴回数の数字のみが表示され
グラフを出すにはワンクリックする必要があるので、一長一短です。
4位以下個別の動画の伸びは、「投稿動画:新しい順」という項目の上部にある
「投稿動画一覧へ」というところで見ることができます。
ただし、執筆時点では「集計期間中の再生数が多い順」などに並べ替えることができませんでした。
niconicoとYouTube、それぞれの再生数ベスト3の比較
執筆時点でのベスト3は以下の通りです。
【niconico】
1位 695再生 きみはライバル
2位 288再生 お嬢様と執事の冒険
3位 268再生 鏡音リン・レンって誰?関係性は!?調べてみました!
【YouTube】
1位 10,670再生 使えない部下 悩める上司
2位 2,397再生 頼りになるぜ☆アルパーカー!
3位 1,595再生 お嬢様と執事の舞踏会
niconicoでは集計期間中に投稿した新作動画「きみはライバル」が1位です。
新曲が一番伸びるのは当然の結果…と思いきやそれはYouTubeのほうでは常識ではなく、
ご好評を頂いている既存曲がズラリと並ぶ結果になりました。
このデータを見る限り、常に新曲を追いかけている方というのは、それだけで
ボカロ曲を/私の曲を聴いている方全体から考えると相当コアな存在かと推察されます。
ニコ動では「お嬢様と執事の冒険」、つべでは「舞踏会」がランクインしているのは何故かというと、
「冒険」はYouTubeでは転載版のほうが120万再生を超える伸びで、人気としてはどの曲よりも高く、
楽曲を検索した人がniconicoの私の動画を見つけて再生していく一方で、
後から自分でアップしたYouTube版のほうは、あまり検索にかからないのが原因と思われます。
一方、「舞踏会」はniconico・YouTube同時アップであり、
転載版の「お嬢様と執事の冒険」に関連動画として、続編であるこの曲がよく表示されており、
そこから流れてきているということなのでしょう。
nico3位の「かがしら」は、集計期間中に投稿1周年を迎えたため、
Twitterで積極的に宣伝したり、ニコニ広告を入れたことがランクインにつながったのかもしれません。
実際、1日ごとの伸びのグラフを確認すると、投稿1周年である2020年7月20日付近に
再生数の飛び抜けて多い日を示す、グラフの山が2つあることがわかるかと思います。
全動画レポート
次にniconicoで「全動画レポート」を見てみます。
一番上の項目はサマリーと同じ「あなたの全投稿動画」なので説明を省略します。
その下をたどると「視聴者」のレポートとして、性別と年齢の比率が出てきます。
視聴者(年齢・性別比)
YouTubeではお馴染みの性別・年齢比ですが、niconicoでは明らかになっていなかったので
これが見れるのはとても大きな改善点だと思います。
性別比はniconicoで男性41%、女性59%。
YouTubeでは男性38.9%、女性61.1%ですから、ほぼ同じ、誤差の範囲内と言ってもいいでしょう。
年齢層を見ると、24歳以下の視聴者の割合がYouTubeでは若干高いでしょうか。
この合計が67.8%となっており、逆に25~34歳は8.7%とかなり低いです。
それに対して、niconicoでは24歳以下の視聴者が48%です。
そのひとつ上、25歳から34歳が28%となって、非常に大きな差が出ています。
このデータを見る限り、niconicoで動画を見ていたかつての学生、今は社会人の方は、
相変わらずniconicoでボカロ曲をチェックしているという一方で、
最近の学生はniconicoとYouTubeを併用しつつも、YouTubeをよく利用する…というユーザー像が浮かびます。
アクセス(デバイス)
次にその下は「アクセス」と題して、「デバイス」と「アクセス元」の情報が表示されています。
「デバイス」に関しては、「PC版ニコニコ動画」「スマホブラウザ版niconico」など、
YouTubeに比べて具体的な手段を示している印象です。
特にスマホでも、アプリとブラウザを分けているのはYouTubeにない点かもしれません。
YouTubeだと、「デバイスのタイプ」で携帯電話/タブレット/パソコンを区別して、
「OS」でAndroid/iOS/Windows/Nintendo Switch…といったOS別の表示がされるのですが
これが組み合わさったイメージに近いと思います。
niconicoでは「その他」(nicoboxのアプリなど)が39%と多くて不明な部分もありますが、
見えている部分だけで言うと「PC版ニコニコ動画」が35%に対し、スマホ関連の合計が20%ですね。
PCの視聴がかなり多いというのがやはりniconicoの大きな特徴だと思います。
これに対し、YouTubeの「デバイスのタイプ」では、
携帯電話が56.3%に対し、パソコンが18.7%と大きな差があります。
ですからこれまでのデータの傾向からちょっと乱暴にくくってしまうと、
「コアなボカロ廃の社会人が、パソコンで新曲をチェックするために見るniconico」
「学生がスマホで名曲をのぞき見るYouTube」といったところでしょうか。
アクセス(アクセス元)
続きましてその右の「アクセス元」ですね。
YouTubeで言うところの「トラフィック ソース」に該当する、非常に興味深いデータです。
これを詳しくみていくと、niconicoとYouTubeの経路の違いが改めて明らかになる感じです。
YouTubeのトラフィック ソースではやはり「関連動画」からが多く、全体の37%を占めています。
niconicoでこれに該当しそうなのは、おそらく「動画視聴ページ」の6%でしょうか。
そしてniconicoのアクセス元の上位を見ると、1位は「マイリスト」の21%でした。
作者本人のマイリストから行くケースや、ランキング動画のような他人のマイリスト、
あるいはリスナーが自身の非公開のマイリストから連続再生したものなど、様々考えられます。
それに対して「シリーズ」が3%、「投稿動画」からが2%ですので、
このあたりの動線が整備されてきたとはいえ、
今のデータを見る限りは、マイリストを動画説明文に書いておく行為はまだまだ重要だなと思います。
連続再生もしてもらいやすいと思いますので。
YouTubeで言うと「再生リスト」がそれに近い機能でしょうか。
こちらは「再生リスト」と「再生リストのページ」の合計が18%ぐらいです。
次が「ニコニコ内検索」が20%です。
YouTubeにおいて「YouTube検索」は13.1%ですから、
niconicoではやはり検索が主な手段として使われているのが証明されているデータかと思います。
そして「Twitter」が8%です。
これが非常に興味深くて、YouTube の方だと「外部>Twitter」というデータになると思うんですが、
「外部」は全体の4%で、「Twitter」はさらにその少ない中の5.6%にすぎません。
数にすると、23,000再生のうちのわずか55再生です。
一方、niconicoは6,000再生の8%ですから、500再生あまりと大きく差がついています。
これは、やはりコアなリスナーの方がボカロ曲をTwitterで紹介する時に、
niconicoとYouTubeの両方に動画がある場合、
基本はniconicoのURLを貼る慣習があるのが影響しているかと思います。
実際、私もTwitterでボカロ曲を紹介するときはniconicoのURLをよく貼ることが多いです。
動画のキャプチャをそのままTwitterに貼れる機能がとても便利なのが大きいです。
このブログに貼るには、YouTubeの埋め込みが楽なのでまた別ではあるのですが。
そして経路として「YouTube」が4%あるのも興味深いです。
私は両方に上げている動画は必ず、niconicoにYouTubeのリンクを貼り、
YouTubeにniconicoのリンクを貼っているのですが、これもちゃんと意味のある行為だったんだなと
データで確認できたのは良かったと思います。
その他、「ランキング」や「ニコレポ」、「Google検索」、また「ニコニコ生放送で引用」などの
なかなか詳しいデータも書かれています。
動画個別データの分析
個別の動画だと、また違った傾向が見えるかもしれないので見てみます。
アナリティクスの利用条件と今回の対象動画
基本的に執筆時点では、直近180日以内のデータしか見ることができませんので、
6ヶ月以内に投稿した動画、例えば「春待ち八重桜」を見ていきます。
この半年前までというのは将来的にはおそらく改善されていくのでしょう。
また、最後の動画投稿から365日が経過すると、全動画の分析データ自体が見れなくなってしまうので、
「ボカロP免許」じゃないですけど、最低1年に1回は動画を上げましょうということなんでしょうね。
1年以上動画を公開していなくてもアナリティクスを見れる裏技?
niconicoのヘルプによると、「非公開動画」は「最終動画投稿」に含まれるとのことなので、
抜け道は用意されているようです。
niconicoから離れていたけど、どうしてもデータを見たい方は
なんでもいいから非公開で動画を投稿してみるのをこっそりお試しください。
※その非公開動画を削除するとまたデータが見れなくなります。
この動画の推移
ご覧の通り、初日の再生が非常に多いということがわかります。
これはYouTubeもほぼ同様ですね。
・YouTubeでは関連動画に表示されれば
・ニコニコではランキングに載るようになれば
そこから加速度的に再生数が増えていき、初日の数字を上回ることもあります。
視聴者(性別と年齢)
視聴者の比率ですが、私の動画全体の傾向(男性41%/女性59%)とは大きく異なり、
男性63%/女性37%というデータが出ております。
実はYouTubeのデータでもこの曲は男性が半数を超えていますので、
複数のサイトを突き合わせてこの結果ということは、この動画特有の何かがあるという仮説に至ります。
思い当たるフシは2つあります。
・曲のメッセージがわりと演歌的なので、そこが男性に響いているところがあるかもしれない。
・「ボカロPが17時間で1曲を完成させた全工程まとめ」というそこそこアクセスのある記事で、
「春待ち八重桜」を作例として紹介しているため、
DTMer(男性が多いとされている)によく見られているかもしれない。
年齢も、動画全体(48%)よりは24歳以下の比率が38%と、若干上の世代に見られていることも
その仮説を裏付けるデータのひとつになりますね。
その下には、「この動画を見てる人が最近見ている動画」のリストが表示されています。
YouTubeでも「関連動画」でどんな動画から来たのかの一端はつかめますが、
そもそも関連動画からの流入がほとんどないような作品ではそこが見えづらかったので、
ある程度「私の曲を見た人はこんな動画を見ているんだな」というのがこういう形で表示されると
わかりやすいです。
ちなみに最近はYouTube Studioにも「視聴者が再生した他の動画」という項目が
ベータ版として登場しました。
今は全動画レポートにしか出てないですが、そのうち個別動画にも表示されるかもしれません。
アクセス
アクセス元も調べてみました。
「ニコニコ内検索」が24%で最多です。
数にすると400再生ほどでしょうか。
「ボカロ(鏡音)曲は、きっちりとタグやサムネイルなどを整備すれば、
niconicoでは200~300人くらいには見られる」
というところをある程度裏付けるデータにはなっているかと思います。
「Twitter」の17%が続きます。
やはりTwitterにniconicoのURLが貼られて、そこから見る人は多いという事実が浮かび上がりますね。
また、「ランキング」経由が11%ありました。
ニコニ広告をある程度投下したので、毎時ランキングにもちょっとだけ載ったところから
流れてきたと思われるのが、200再生ぐらいあるということですね。
非常にありがたいと思います。
おそらく有名曲であればさらに「ランキング」の比率が多くなると思われます。
おわりに
YouTubeに比べたらまだまだ簡易的にではあるんですが、
それでも何も情報がなかったniconicoにこれほど投稿者向けの情報がついたのは
非常に運営の方が頑張ったと思います。
ユーザーに寄り添う姿勢が確実にひとつずつ出ていると思います。
これをもとに様々な戦略を考えていくこともできそうです。
今後もniconico、YouTubeそれぞれの視聴者の方を大事にしつつ活動していきたいと思います。
著者「アンメルツP」について
アンメルツP(gcmstyle / 安溶二)
ボカロP。鏡音リン・レンなどのVOCALOID(広義)を歌わせたオリジナル曲・カバー曲を2008年から作り続けています。代表作にゲーム『プロジェクトセカイ』収録の高難易度曲「人生」、著書に『ボカロビギナーズ!ボカロでDTM入門 第二版』(インプレス)など。
音楽ジャンルに関係なく、キャラクター性を活かしたボカロ曲を制作しています。
楽曲ストリーミング配信、カラオケ配信(JOYSOUND/DAM)多数。